7/6(水)大出血の日の話(その2)

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「7/6(水)大出血の日の話(その1)」はこちら。
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午前1:17
もう出血開始から7時間近く経過した。桜子は朦朧としている。疲れているのか、眠たいのか、失血で意識が遠のいてきているのか?でも、これで朝までもたなかったら、それが桜子の限界値ってことだと思う。いよいよ、桜子の最期を覚悟する時が来たと思った。みたらし君の時のように、朝が来たら呼吸困難を起こして苦しんで息を引き取るのだろうか?と全身が緊張した。

ここに来るまで、桜子にはもう何回も何回も「今日こそ危ない」って時があった。最初はもの凄い血尿が7日間続いて、一気にヘマトクリットが10近くまで落ちて緊急輸血した時。1年間、休むことなく続けた来た抗がん剤を初めてお休みすることになった。

その次は、やはり鼻血が止まらず、緊急の先生に夜遅くに診てもらい、鼻血は治まったものの「リンパ腫の再燃」その時外注検査して後日「DIC疑い」って言われた時。食事もほとんど食べなくなった。

その後は、腹部が妊婦さんのように一気に膨らんで、立ち上がることが不可能になって口が真っ白になった。輸血をしても元気になるのは一瞬で、日に日に衰弱していき、どの先生も「もう十分頑張ったじゃないですか。もう治療はありません。後はお家でゆっくりと...」と言っていた。

輸血したい!と言っても「それが命取りになります」「助かる見込みのない輸血をしても意味がない」こんな冷たい言い方をされた訳ではないけれど、要約すればそんな感じだった。確かに正しい意見だと思う。だけどどうしても桜子が死ぬような気がしない。そう信じていた。でも、今夜はいい加減、本当にお終いなのだろうか....





なかなか泣かないわたしだけど、やっぱり桜子とお別れすることになると思うと、涙が次々と流れてくる。まだ病院が始まる9時まで7時間もある。クロスマッチして採血して、輸血開始するまでには10時間以上もある。どう考えても間に合わない。やっぱり昨夜輸血を選ばなかったのは、「もう桜子を死なせてもいい」って選択だったのかも。間違ったかな。ごめんね、桜子。本当にごめんね。

午前2:41
桜子はわたしの記憶が正しければ、昨日の午後16時くらいからずっと起きてることになる。朦朧としながらも絶対に目を閉じない。薄目を開けてわたしを見ている。泣いてるわたしが心配なのか、鼻血が気になっているのか。このままじゃ余計に体力を消耗させてしまう。部屋を暗くして、わたしも横になろう。そうすれば桜子も眠るかも知れない。もう血液をいちいち拭き取ったり、タオルを交換してても意味がない。血だらけになってもいいから、まずは桜子を眠りに着かそう。

午前3:15
桜子の横に並んで寝てみたけれど、今度は桜子が起き上がってわたしを起こそうとする。「眠らないで!」って言っている。何回もトイレをしたり、バスルームへ水を飲みに行って転んで倒れたり...その度に、部屋、廊下などが血だらけになる。動けば余計に出血するのに!なんで動くの!?死にたいの!?少しイラッとしてしまう。こんなに心配しているのに。どうして大人しくしててくれないの?

午前4時
くらいから一気に容態は悪化した。たくさん動いたせいだ。グガァ、グガァと血液が喉に絡んで呼吸が苦しそう。目からドロドロとした涙をたくさん流している。舌色は薄いピンクから紫色に変色していた。とうとう動かなくなった。枕を高くしてあげて、鼻血が上手く流れ落ちるようにしてあげる。鼻の穴を塞ぐ大きな血の塊が3cmほどになった。その塊のお陰で、鼻の穴から血が出てくることはなくなったけれど、出血自体は止まっていない。口の脇から血が流れて出てくるので止まってない。

突然、桜子が全身を硬直させて、手足を伸ばしてガッ!ガッ!と、てんかん発作のようになった。「桜子!桜子!ちゃー!!!」と名前を呼んで、顔を持ち上げる。「大丈夫!大丈夫!」と叫ぶと、口から大量の血を吐き出して、ジタバタと暴れて立ち上がろうとする。仕方ないので、両手で腹部を抱えて起立させると、顔をブルブルと振って、鼻の穴に溜まった血液を必死に出そうとしている。

眠りたい意識と、呼吸が出来なくなる恐怖で、桜子は意地でも寝ないんだ。スゥーと意識が遠のくと、ガバッ!と鼻血を噴射させて、また朦朧とする。その後、立て続けに全身硬直のような姿勢になって、暴れる→倒れるを繰り返す。わたしも桜子も全身血だらけ。狭い部屋は、壁も床も真っ赤。そして血液の生臭い臭いが充満していて、もの凄い状況だった。さすがに、寝ていた官ちゃんや猫たちも大変な状況なんだと理解してきたのか、桜子の周りに集まってくる。

「簡単に死ねないって可哀相」と思った。こんなにも苦しんで、尚も生きようとしているのか?死ねないのか?どっちなの、桜子。でも【死を自ら望むのはニンゲンだけ。動物は何としても生きようとするもの】だって聞いたことがある。ならば桜子は生きるために、今こうやって大量の出血と闘っているんだ。

中途半端に固まり始めた血液が、喉や鼻を塞ぎ出している。このまま窒息死なんて絶対に嫌だ。50mlのシリンジに水を入れて、無理やりだけど喉に流し込んだ。最初は、血液と一緒に吐き出していたけれど、少しずつゴクゴクと飲むようになる。口呼吸が出来るようになる。しかし、少し経つと、無呼吸症候群のような寝方をし始める。「桜子!桜子!水だよ!」と呼んで水を飲ませると、自ら飲もうとする。またスースーと呼吸が戻る。

「(出血)止まって!止まって!」必死にそうやって思い続けた。ていうか、なんでこんなに止まらないの!?馬鹿じゃないの!?たかが鼻血で死ぬなんてアホくさいわ!桜子はそんなショボイ死に方なんてしないから!「桜子ちゃんの血液は、もう自身の凝固作用というものがほとんどなくなっているんですよ」先生の言葉が頭に浮かぶ。

桜子の呼吸が静かながらも一定のペースになって落ち着いてきたのが、夜もとっくに明けた
午前5時頃。

でも、とても弱々しい呼吸になった。「衰弱している」まさにそんな感じ。さっきまでは必死にわたしを目で追っていたのに、それすらしなくなってきた。

だけど....眠らない!!!目をつぶらないのです。

必死に鼻から呼吸しようとするけれど、それが出来なくて、口をハッハッと開けては、突然咳をしてむせている。眠たいのに、眠れない。「アイサン、わたし、鼻が塞がってて苦しい」そう言っているのが伝わってくる。前足で鼻を塞ぐ血の塊を取ろうとするけれど、その体力がなくてただ両手をバタつかせている桜子。

おいおいと泣きながら、考えた。桜子に無理をさせているのは、このわたしで、早く死なせてあげた方が本当は桜子は楽なんじゃないか?つい声に出して「もういいよ、桜子。眠っていいよ。頑張らなくていいよ...」と言ってしまう。

先生に「この鼻に出来た血の塊は、止血するのに大切なものだから取ってはダメ」と言われていた。だけど、桜子がそれをずっと気にして嫌がっている。鼻で呼吸したいと言っている。「これ、取ってしまおうかな....」と考えている自分がいました。取ったら、きっと楽になれるんだ。でも....そっと血の塊をつかんでみた。少し引っ張る。しっかりと粘着しているみたいで、簡単には取れそうもなかった。心臓がもの凄く緊張した。どうする?本当にこれを取ってしまおうか?

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続きは、また別記事にてupします。長くてすみません。
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